君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
確かに剣道の大会は本当にスピーディーの淡々と進んでいくし、サッカーみたいに学校ごとにわかりやすくユニフォームが違うということもないから、見分けはつきにくい。
みんなほとんど濃紺の剣道着で、面で顔を隠しているから、ぱっと見全員同じに見えるかもしれない。
垂や袖の刺繍で学校名と名前を確認するしかないけど、応援席から動き回ってる選手のひとりひとりを確認するのは難しいだろう。
「だからいいよ。気持ちだけで」
「なんでー? 加奈子は行かないかもしれないけど、あたしは行くよ」
「いいってば。……正直、今回は来てもらっても気を配れないと思うし」
「あんたそんなの、もともと気にするタイプじゃないでしょ! 楽しみにしてるから、がんばって。絶対行くね!」
楽しみ、か。剣道のルールなんて全然知らないし、技も見分けられる気がしないから、見ててもよくわからないって言ってたのに。
いまの樹里は本当に、楽しみにしてるみたいだ。待ち遠しいくらいに見える。
「……ねぇ」
「んー?」
「それって、誰の応援?」
先に歩き出していた樹里が、驚いた顔で振り返った。