君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている



「ただいま~」


くたくたな体を引きずって家に帰ると、玄関を開けた瞬間に良い匂いに出迎えられた。

揚げ物の匂いがする。
やった、揚げ物大好き。

ポイポイっと靴を脱ぎ捨てて、笑い声のするリビングに飛びこむ。


「あら、お帰り歩。遅かったわね」


ダイニングテーブルについていたお母さんが、首を伸ばすようにこっちを見て言った。

お母さんの向かいに座ってた妹も、振り返って「おかえり」とにこやかに笑う。


「あー! 唐揚げじゃん! ラッキー」


揚げ物の中でも、やっぱりいちばんは唐揚げだよね。

サクサク、じゅわ~って、幸せの味しかしない。


鞄も竹刀も持ったまま、お皿に積まれた唐揚げをひとつ摘まんで口に投げ入れる。


「こら、歩! 行儀の悪いことしない!」

「ふぇ~い。うんまー」

「まったく……誰に似たんだか」


< 26 / 333 >

この作品をシェア

pagetop