君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
「前に優ちゃんが、あたしには勝ちたいって気持ちが足りないって言ってたじゃん。あれ、あの時は意味わかんなかったんだけど……いまはわかるよ。絶対に勝ちたい」
「勝てるよ」
「……ほんとにそう思う?」
アイスを齧った前歯が、その冷たさにジンと痺れる。
深月はぐしゃぐしゃと、あたしの髪をかき混ぜて言った。
「勝てる。お前はならやれる」
「なーんであたしより、深月の方が自信満々で言うかな」
「知ってるからな、俺は」
「知ってるって、何を?」
しゃりしゃりとアイスを噛みながら横顔を見上げる。
深月はただ、笑っていた。
答えはもらえなかったけど、なぜだか少し勇気をもらえた気がした。
あたしは、やれる。
「絶対勝とうね」
「当たり前だ」
見上げた夜空に星はなかった。
明日の予報もまた、雨。
でもきっと、あたしは勝ってみせる。
そうしたらきっと、あの日から振り続けている雨も、止ませることが出来るような気がした。