君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
「ごめん……」
「バカ、謝んな。いいんだよ、誰だって試合前は緊張する」
「でもあたし……っ」
やっぱり、ダメかもしれない。
優ちゃんがいないと、優ちゃんのあの手がないと。
だってこんなに手が震えてる。竹刀がまともに握れないくらい震えてる。こんな状態でコートに入ったら、蹲踞する前に竹刀を落としちゃう。反則で負けちゃう。
あんなにがんばったのに。深月も一緒にがんばってくれたのに。
それなのに、最後の最後であたしは……。
「か、勝たなきゃいけないのに。あたし、優ちゃんがいなくても、ちゃんと」
深月の道着の袖を握りる。全然力が入らないけど、握りしめる。
「どうしても、勝たないと。優ちゃんなしでもできるって。ひとりきりでも、勝たなきゃ意味ないのに……っ」
「落ち着け、歩!」
面を掴まれ、強引に上を向かせられた。
面金越しに見る深月の猫みたいな瞳は、真っ直ぐに、あたしの奥の奥まで見つめてくるようで。
思いのほか優しく、深く労わるような眼差しに、一瞬呼吸が止まった。
「違うぞ、それ。間違ってる」
「な……にが」
「ひとりで勝てるなんて思うな」