君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

目を見開いた。面の奥を覗き込むように、深月が顔を近づけてくる。


「そ……れは、あたしじゃ、ひとりでは勝てないって……」

「そうじゃない。無理にひとりになろうとするなって言ってるんだ。頼っていいんだ。助けてくれって言っていいんだよ」

「そんな……それじゃあ、いままでと何も変わらない!」

「変わるんだよ、ちゃんと聞け!」


それまで黙っていた後輩が、遠慮がちに「先輩、そろそろ……」と声をかけてくる。

横目で確認すると、コートから選手が出ようとするところだった。


「いままで主将に甘え切ってたお前も、主将から離れてひとりで歩こうとしてるお前も、どっちもただのひとりよがりだ! 周りが全然見えてない!」

「じゃあ、じゃあ、どうしたらいいの!?」

「だから頼れって言ってるだろ! お前はひとりじゃない! 仲間が、俺がいるじゃねぇか!」


ビリビリと、深月の声が空気を震わせる。

深月が怒ってる。いや、悲しんでるのか。どうしてわからないんだと、嘆いてる。


「あれだけ依存してたのに、急に自立しようとしたってどうやっていいかわかんねーんだろ」

「あ、あたし、自立しようとしてんの……?」


< 279 / 333 >

この作品をシェア

pagetop