君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
「いや、いいよ! 明日に向けてみんなで残るんでしょ?」
「でも、お前」
「ほんと、いいから。……ひとりで行きたいんだよ」
笑ってそう言ったあたしに、深月は納得していないような顔で、渋々引き下がった。
ほっとして、荷物を肩にかけ直す。
これ以上は深月に心配かけちゃいけないと思った。団体戦、がんばってほしいから。
「じゃあ、行くね」
「……ああ。白木主将によろしくな」
うん。会えるかどうかは、わからないけど。
クリーンルームに入ると、家族しか面会できないと言っていた。もしいま優ちゃんがそこにいるなら、お見舞いに行っても顔を見ることも出来ないかもしれない。
それでもただ、あたしが行きたいだけなんだ。
「深月。……ありがと」
今日のこと。それから今日までのこと。
深月と過ごした時間と、深月にもらったたくさんのもの。
そのすべてへ向けてのお礼だった。
深月はなぜかムッとした顔になり、袴を翻し背を向ける。
「ばーか」
広い背中が弓道場へ消えていく。
久しぶりに聞いた深月の憎まれ口はひどく優しくて、くすぐったかった。