君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
病院にたどり着く頃には、思った通り雨が降り出した。
雨は嫌いだ。
いまは特に、濡れるだけで敗北感でいっぱいになる。
患者か見舞客か見分けのつかない人々が、駐車場の方から走ってくる。正面玄関から病院ロビーに駆けこんでいく人たちに紛れ、あたしも中へと踏み込んだ。
けれどものの数秒でまた、降りしきる雨の中へと飛び出していた。
ダメだ。とてもじゃないけど、中には入れない。
どんな顔して会いに行けっていうんだろう。負けたくせに、のこのこと。
銀色に鈍く光るメダルに通った紐を、きつく握りしめた。
こんな色じゃ、優ちゃんには見せられない。見せていいのは、眩い金色だけだったのに。
インターハイ出場を報告して、言いたかった。もう大丈夫だよって。
あたしは優ちゃんがいなくても、ちゃんとやれたんだよって。
いままでは頼り切りだったけど、甘えてばかりだったけど、これからはあたしが優ちゃんを助けるから。
いままでたくさんしてもらった分。いや、それ以上になんだってするから。
だから安心して、病気を治して戻ってきてって。
そう、言いたかったんだ。