君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

「家でいちばん食べてるくせに、何が旅よ。いまどき男の子だってもうちょっとちゃんと家のことするわ。白木さんちの優一郎くんなんて、ご両親が単身赴任でいないのに、家のこと全部自分でやってるじゃない」

「それは優ちゃんが凄すぎるの!」

「あんたはそうやっていつも……っ」

「お母さん。部活やってないわたしが歩の分も手伝えばいいんだからさ」


立ち上がりかけたお母さんを押さえて、智花が「歩、お風呂行っておいでよ」と笑顔で言う。

なんて出来た妹だろう。

絶対あたしのこと「どうしようもない姉」って思ってるはずなのに、智花はそういうのまったく態度に出さない。


「お言葉に甘えて、行ってきまーす」


竹刀を背負い直して、ふたりに背を向ける。

お母さんの小言がまだ聞こえてきたけど、知らんぷりをしてリビングを出た。

どうせ智花がお母さんをなだめてご機嫌とるだろう。

 
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