君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
「……なんだよ。俺の顔になんかついてるか?」
じっと見ていたら、気づかれた。
深月は居心地悪そうに眉を寄せて、自分の顔を撫でる。
すっかり精悍な、男らしい男になった……なんて。あたしがそんな風に思ってるなんて知ったら、きっと大笑いするだろう。
「深月」
「なに。なんかやっぱついてんの?」
「そうじゃなくて。遅くなったけど……これ」
剣道着の胸元に手を入れて、隠していたそれをそっと差し出した。
深月の猫みたいな目が見開かれる。
前に渡してくれって頼まれた、深月の手紙だ。あちこち折れて跡がついちゃってるけど、どこも破れてないし、汚れてもいない。
深月がラブレターを書くなんて、想像すると笑えてくるけれど、ほんとに笑えはしなかった。
これもきっと、悲しいというよりも、ただ切ないと感じているんだろう。
深月は黙って、渡されなかった手紙を受け取った。
「返すね。深月が自分で渡すのがいいんだと思う」
ラブレターを届ける仕事は、もうやめにする。そう決めた。
想いはちゃんと、自分で届けるべきだって思うから。誰よりそれを、わかっているから。
間違えず、真っすぐに、好きな人に伝えるべきなんだ。