君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
あたしらしくもない、神妙な面持ちになってるのはわかってる。
こんなんじゃダメだと、無理やり口の端を引っ張り上げるようにして笑った。
「……っていうか! 宛名とかなんにも書いてなかったんですけど!?」
返した手紙を指さして、わざとらしく深月を睨む。
そう。この手紙を託された時は、動揺しすぎていて封筒を確認するのも忘れていたんだけど。
今朝引き出しを開けて改めてちゃんと見てみたら、宛名も差出人も、何も書いてないことにはじめて気がついたんだ。
深月らしいと言えばそうだけど、さすがに奇跡を起こす剣道小町でも、宛先不明じゃ届けようがない。
なんて……。ほんとはわかってるけど。この手紙の届け先。
透明な文字で書かれた名前は、あたしの親友のものなんでしょ?
でも、気づかないふりをした。せめてもの抵抗……って言ったら、さすがに往生際が悪いか。
でも、あたしの手で届けるのは、どうしても嫌だと思ったんだからしょうがないじゃん。
「あたしのこと、バカバカ言うけど深月だって相当じゃん? ま、渡さないって決めたからいいんだけどさ。……自分で出す時は、ちゃんと宛先書くんだよ」
ちょっぴりセンチメンタルな気分になってそう言ったあたしに、深月はかわいそうなものを見るような目を向けてきた。