君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
「そうだよ、手紙だよ! 書いた本人にはどうなっても文句言うなってあらかじめ断ってるし、そういう覚悟もあると思う。でもこの手紙はちがうじゃん!」
手紙に覚悟なんてない。
ただここに書かれているのは、千世が越智くんに抱いた切実な恋心だけだ。
たぶん、そのはずだ。
これは越智くんに受け取られ、読んでもらうために生まれた手紙なのに、越智くんはそこのところを全然わかってない。
「めちゃめちゃかわいそうじゃん! 越智くんを想って、越智くんのためだけに書かれたこの手紙が、ぐしゃぐしゃにされたりビリビリにされたり粉々にされてもいいの? 汚れたり、暗いところに隠されたりしても、本当にそれでいいの?」
「いや、俺は……」
「いまちょっとでも手紙をかわいそうって思ったんなら、受け取って! あたしとか書いた本人のためじゃなく、かわいそうな手紙のために受け取ってあげてよ!」
ドンと強く、越智くんの胸に押し付けた。
いつの間にか薄ピンクの封筒にはシワが寄っていて悲しくなる。