君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
無意識に強く握っちゃってたみたいだ。
綺麗なまま、手渡したかったのに。
千世の純粋な気持ちみたいに、綺麗なままで。
それでも越智くんは、まだ受け取ってくれない。
でも、迷うみたいに上げられた手に希望をつなぐ。
「返事は……しなくていいよ。告白自体は断られたって伝えておく」
「でも……受け取ったら、期待するだろ。それは悪いから」
「大丈夫。期待するのは越智くんの負担になるって言えば、千世も納得すると思う。越智くんが本当にサッカーがんばってること、ずっと見てたって言ってたから」
越智くんは意外そうに目を見開いて「千世って、井原千世?」と聞いてきた。
友だちとかじゃなかったって千世は言ってたけど、同じ中学ってことは越智くんも知ってたのか。
「そう。同じクラスなんだ。中学の頃から、越智くんがサッカーに一生懸命なところをずっと観て、応援してたって。彼女は作る気ないって知ってたけど、気持ちだけ伝えたかったんだよ。きっと断られることもわかってたんじゃないかな」