君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

千世の気持ちは考えたらわかるけど、本質的なところではあたしにはわからないものだ。

そしてそれは、越智くんの方も同じだったらしい。


「断られるってわかってて、なんで告白なんてすんだよ……」

「だよねー。自分からすすんでしんどい思いするなんて、意味わかんないよね。だって告白しなきゃフラれることだってないわけだし」

「まじわっかんねぇ。俺みたいなの好きになって、何が楽しいんだよ。例え付き合ったとしても、俺サッカーしかしねーよ、きっと」

「わかるわー。あたしも彼氏できたとしても、たぶん剣道しかしないもん。恋愛なんて、何が楽しいんだろうね。もっと楽しいこと、他にいっぱいあるのにさ」


誰かを好きになったら、何かを捨てなきゃいけない気がする。

誰かと付き合うようになったら、いまの楽しいことを諦めなきゃいけない気がする。


それって楽しいの? それで幸せなの?

あたしにはそれが、ただ恐いこととしか思えない。



「でも……後悔したくなかったんだろうなって、それはちょっとわかる」

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