君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
「後悔?」
「うん。後悔。言わずにそのまま見てるだけで後悔するなら、言ってきっぱりフラれた方がすっきりする気がするじゃん」
サッカー部のマネが越智くんのこと狙ってるんでしょ?
とは、さすがに本人には聞きにくい。
ちらりとグランドの脇に目をやれば、こっちをずっと見ているマネージャーらしき女子がいるから、千世が言ってたのは本当だったんだろう。
「越智くんが他の誰かと付き合ったりする前に、告白したかったんじゃない?」
「だから、俺は誰とも付き合う気がないって言ってんのに」
「わかってるって。それは千世に伝えておく。だからさ、安心して受け取ってよ」
もう一度、ダメ押しで手紙を押し付ける。
越智くんの体温と、初夏の日差しを浴びて、手紙は乾いた熱を持っていた。
「この手紙はもう、差出人の手を離れたただの手紙なんだからさ」
越智くんは胸元の手紙をしばらく見降ろしていた。
背後から、彼を呼ぶ声がして、ようやく日に焼けた手が動いた。
「……わかったよ」