君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
「持ってきたのが小島さんじゃなかったら、受けとらなかっただろうな」
「いやあ……ほんと、強引でごめん! 練習の邪魔もしてすみませんでした!」
まだ遠くから越智くんを呼ぶ声がある。
あたしは拝むようにして謝って、後ずさりした。
「いいよ。じゃあね、小島さん」
「越智くん! あの、本当にありがとう!」
手紙を持った手を振って、越智くんが仲間のもとに駆けていく。
青い背中はさっきよりずっと、大きくたくましく見えた。
日焼けした手が封筒をそっと折って、しっかりとズボンのポケットにしまうのを見届けて、あたしも元来た道を戻る。
歩調はゆっくりと早まって、最後には跳ねるように駆けていた。
視線の先では腕組みをして立っている、深月の姿がある。
面倒くさそうにしてたくせに、ちゃんと待っててくれたんだ。
意外な優しさにさらに嬉しくなって飛び上がった。
「深月ー! やった! 受け取ってもらえたあ!」