君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

「持ってきたのが小島さんじゃなかったら、受けとらなかっただろうな」

「いやあ……ほんと、強引でごめん! 練習の邪魔もしてすみませんでした!」


まだ遠くから越智くんを呼ぶ声がある。

あたしは拝むようにして謝って、後ずさりした。


「いいよ。じゃあね、小島さん」

「越智くん! あの、本当にありがとう!」


手紙を持った手を振って、越智くんが仲間のもとに駆けていく。

青い背中はさっきよりずっと、大きくたくましく見えた。


日焼けした手が封筒をそっと折って、しっかりとズボンのポケットにしまうのを見届けて、あたしも元来た道を戻る。

歩調はゆっくりと早まって、最後には跳ねるように駆けていた。

視線の先では腕組みをして立っている、深月の姿がある。


面倒くさそうにしてたくせに、ちゃんと待っててくれたんだ。

意外な優しさにさらに嬉しくなって飛び上がった。


「深月ー! やった! 受け取ってもらえたあ!」


< 69 / 333 >

この作品をシェア

pagetop