君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
「深月にはわかんないだろうね~。どーせあんたは、ラブレターもらってもろくに読みもしないんでしょ?」
「いまどきラブレターなんて書くやつそういないだろ。つーか、重い」
「ほらね~。あー冷たい。あたし誰かが深月に手紙渡してくれって頼んできたとしても、絶対橋渡しなんかしてやんない」
渡す方が手紙がかわいそうになる。
こいつが受け取ったとしても、きっとぞんざいに扱われるんだから。
「だからいらねーって。自分で気持ちも伝えられないような奴、こっちから願い下げだし」
「うわー、引く引く。こんな冷徹人間がなんでモテるんだか。あんたもちょっとは優ちゃんを見習って……」
深月の腕を離し、指さしながら詰め寄ろうとしたところで、背中に声がかかった。
「誰を見習うって?」
静かなのによく通る声だった。
あたしのよく知る、あたしの大好きな、耳に心地よい声。
でもいまは、底冷えするような冷たさをはらんでいるのを感じた。
「ゆ、優ちゃん……」
剣道場の前で、腕組みをした練習着姿の優ちゃんが立っていた。