君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
中からは練習中の部員の声が響いてくる。
しまった、もう始まってたんだ。
ちらりと深月を伺うと、珍しく顔を強張らせて優ちゃんを見ている。
心なしか若干青褪めた顔をしてて、あたしもきっといま、似たような顔になってるんだろうなと思った。
「随分楽しそうだな、ふたりとも。一体この時間までどこで何してたんだ?」
笑顔なはずなのに、目が全然笑ってないのが恐ろしい。
いつもの菩薩じゃない、鬼主将の時の優ちゃんの顔だった。
つまりあたしたち……死んだ。
「大会が近いっていうのに随分余裕があるみたいだ。今日はふたりともラストまで隅で黙想」
「えっ!? 黙想だけ!?」
「主将! せめて素振りだけでも! いくらでも振りますから!」
黙想は稽古の最初と最後に毎回やっている、精神集中をはかる方法だ。
正座をして、両手を前で組み、目を閉じて雑念を払い、無心を目指す。
これを2時間の稽古の間続けるということは……つまり、ものすごくきつい。肉体的にも、精神的にも。