君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
正座して微動だにせず集中し続けるのも苦行だけど、それ以上に身体を動かせない、剣術稽古ができないのが何よりつらい。
目を閉じていたら見取り稽古だってできないんだ。
優ちゃんがどれだけ美しい技を決めても、黙想してちゃその音しか聴けない。
大会が近いのに竹刀が振れないなんて、お仕置きにしてもひどすぎる。
「優ちゃ~ん」
「甘えない。練習中は主将と呼べって言ってるだろ」
「主将……お願いします、竹刀振らせてください!」
「俺も、稽古したいです。お願いします」
そろって頭を下げたけど「だめだ」と短く却下されてしまった。
頭を下げたまま、目だけでこっちを見て「お前のせいだぞ」と責めてくる深月。
確かにそうだけど、しょうがないじゃん!
「黙想だって立派な稽古だ。お前たちは雑念が多いみたいだからちょうど良かった。しっかり集中して、無念無想の境地を目指すように」
この日あたしたちの両脚は悲鳴を上げ、居残り稽古をすることすら出来なかった。