君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
大切な人が、誰のものにもならない。
千世が感じる“自分のものにはならない”っていう切なさはわからないけど、安心する気持ちはあたしにもわかった。
その人がその人のまま、変わらずいてくれるってことだから。
それはあたしが求め、願うものによく似ていた。
「ありがとね、歩。歩じゃなかったら、きっと手紙は受け取ってもらえなかったんだよね」
「それはわかんないけど……役に立ててよかったよ。まあこういうのはもうカンベンだけどね」
正直に本音を言うと、千世はおかしそうに笑った。
ちゃんと友だちが笑ってくれたことに、ほっとした。
渡せてよかったって、心からほっとできたから。
加奈子の手紙を渡した山岡先輩も、千世の手紙を渡した越智くんも、ふたりとも返事をしそうにない。
だからもうこういう役目が回ってくることはないだろうって、安心した。
それなのに、事態は昼休みには急転することになる。
越智くんが、うちのクラスに現れた。