君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

その時はよろしくね、なんて茶化すみたいに笑う樹里に、口を尖らせた。

そんな奇跡なんて期待されたって、重荷でしかないのに。

できたらあたしは、そういう愛だの恋だのからは、遠いところに立っていたいんだから。



それなのに、奇跡は本当に起きてしまった。





「来年の、引退まで待ってられる? って言われた……」


昼休みの終わり間際、教室に戻ってきた千世はぼんやりとした顔で、取り囲むクラスメイトたちにそう報告した。

まるで夢を見てるみたいな様子で、白い頬はまだ赤く染まったまま。


「それって」

「いまはムリだけど、引退したら……。その、つ、付き合ってくれるって。あ、あたしの、気持ちがそれまで、変わらなければって」


途切れがちな声でそこまで話すと、千世は両手で口元を覆って、小動物みたいな瞳からぽろりと涙をこぼした。

「やったじゃん千世!」とか「おめでとう!」ってクラスメイトの祝福に、千世は何度もコクコクうなずいて、涙を止められないまま笑ってた。

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