君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
樹里が苦笑いして机の上の1通を手に取った。
ひらひらと目の前で揺らされて「どうすんの、これ?」と無言の圧力をかけられている気がして顔をしかめる。
手紙を託されたのはお昼休み。いまはもうホームルームを残すところになっている。
こんな重たいもの、ずっと手元に置いておきたくなんてない。
だってこの手紙とあたしは、まったくの無関係なんだから、持ってる方がおかしいんだ。
だからできたら千世の時みたいに、即日出荷で手放しておきたいところなんだけど。
「3通は多すぎるよ~……」
1通渡すだけでも掛かり稽古した直後みたいに疲労度が半端ないことになるのに。
3通も一気に渡すことになったら、あたしは今度こそ死ぬのかもしれない。主に疲労とストレスで。
「それは歩が安請け合いするからでしょ」
「してないよ、安請け合いなんて! 見てたじゃん! あたしめっちゃ本気で断ってたじゃん!」
本当に困るんだ、ごめん。……って3人ともに断った。
でも恋する女子っていうのは、あたしが思っていたよりもずっとしぶとく、そして強からしい。