君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
深月なんて昨日優ちゃんに叱られたことにショック受けてるし、かなりあたしのこと恨んでるから、今日も遅刻なんてことになったら何言われるか。
今日だって土下座する勢いで頼み込んで、嫌味言われながらなんとか受けてもらえたんだ。
「歩はもうちょっと男子に関心持つべきだね。女子として終わってるっていうか、始まってもない感じ」
「放っといてよ。あーもう、大会近いのにほんと何やってんだろ」
「あ、そっか。試合応援行くからね。そっちもがんばれ」
「ついでみたいに言わないでくんない? まったく、越智くんに共感したよあたしは。剣道だけに集中したーい」
恋愛も勉強も、あたしにとって大きな価値はない。
高校生活のほとんどをムダにしてるって樹里は言うけど、あたしの青春は部活動だけでできてるから充分だ。
優ちゃんや深月たちと練習して、試合して、笑ってケンカして、また笑って。そういう毎日がこの上なく楽しい。
それ以上は求めない。だからこのまま、ずっと過ごしていたい。誰が欠けても、何が欠けても嫌だ。
そう思うのは、そんなにおかしなこと? いけないこと?
誰に理解されなくても、あたしはあたしの大切なものを守りたい。
ホームルームが始まる。終わったらすぐに席を立てるように、バッグの紐をしっかりと握りしめた。