君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

「え……久坂さん!?」


差出人の名前を見た鈴木くんの頬が、瞬時に赤くなるのを間近で目撃した。

それと同時に、あたしは吹き出してした。

だって鈴木くんの顔が、驚きよりも「嬉しい!」って正直に言ってるんだもん。あまりに素直すぎて、笑うのを我慢できなかった。


「そうそう。同じ図書委員なんでしょ? 久坂成実」

「えー……ほんとに久坂さんが? 信じられない」

「信じようと信じまいと、その手紙は本物だし、あたしは確かに渡したからね」


よし、終わり。さっさと次に行こう。

急がないと部活が始まる時間に間に合わなくなる。それは本気でまずい。


「ちょ、ちょっと待って! これ、受け取れないよ」

「……はあ?」


思わず剣呑な声が出てしまった。鈴木くんがびくりと震えたので、ハッとして笑顔で誤魔化しておく。


「えーとね? 受け取れないって言われても、あたしも困るんだよね。返品は受け付けてないの。あたしはその手紙を届けるだけで、それ以上する気はないからね」

「いや、でもこれってラブレターってやつなんだよね? やっぱりもらえないよ。だって俺……」

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