君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

鈴木くんは一瞬言い淀んだあと、ひとつ息を吐いてそれを口にした。


「俺、彼女いるし」


妙にキリッとした告白に、思わず深月と顔を見合わせた。彼女がいるっていうのは、新しいパターンだ。

そんなこと成実は言ってなかったんだけど。成実は知らなかったってこと?

っていうか鈴木くん、そんな地味で無害ですって顔して彼女持ちか……。


失礼なことをつい考えてしまったけど、雰囲気の柔らかい人だし、優しそうだし、話しやすいし、彼女がいてもおかしくないのかもしれない。

少なくとも、隣りの冷たくて口の悪い猫目野郎よりは、ずっと好感が持てるし。


「あのさ、それって成実は知ってるの?」

「知ってると思うよ。委員の仕事で一緒になったとき、そんな話した気がするし。まあでも、近いうち別れそうではあるんだけど」

「えっ。ケンカしてるとか?」

「いや、特にケンカとかはしてないけど、別の高校なんだよね。最近連絡しても返事がなかったり、彼女がなにを考えてるのかわからないことが多いから、そのうちフラれるんじゃないかと思ってる」

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