溺愛歌姫

俺はいつものように

バイクを止めて

桜の木の前にある木でできた古びたベンチに腰掛ける



見なれた風景を眺めていると

いつもとは違う光景が目に入る



ベンチとさほど離れていない

ブランコに女が座っていた



腰まである長い栗色の髪に

軽くウェーブがかかっていて

透き通るような白い肌

クリッとした目にピンクの唇



風が吹くたび、髪の毛がふわふわと揺れて

とても綺麗だった


その目に俺を写すと

ふわっと微笑む


「こんばんわ」

「珍しいな、人がここにいるなんて。」


しかもこんな時間に。と、

もう夜の12時を回る頃だった。


しかし……この街の女なら

怖くて逃げ出すか

この街で強力なバックである俺らに

守られたいが為に媚を売るか。


女はその2つに二分された


「そうなんですか?
今、引っ越しを終えて散歩してたんです。」


私、ここが地元なんです。

と言い、ふわりと笑った。


その笑顔を見た時

ドクンドクンとうるさく心臓が動く


「そうだったのか、名前はなんていうんだ?」

柄にもなく女に名前を尋ねた
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