好きになっちゃ、ダメなんだ。
「やだっ…」
私の手に一ノ瀬くんの手が触れる寸前、
私は、小さく悲鳴をあげ彼の手を振り払った。
「え…紺野さん…?」
あ然としたような一ノ瀬くんの声を聞き
自分がやってしまったことに後悔する。
しかし幸い、周りの人はスケッチに集中していて
こちらには気付いていないようだ。
よかった………
でも、一ノ瀬くん、怒ってるよね…
「あ、の…一ノ瀬くん、ごめん…」
私はビクビクしながら一ノ瀬くんに目をやった。
しかし、彼はいきなり手を振り払われたというのに
怒るどころか私を心配しているような表情でこちらを見つめている。