たとえこの身が滅びようとも
灰色の空の下を歩き
私は大きな職場に入り制服に着替える。
白いブラウスの内側から
光を帯びる首。
これは隠せない。
あきらめに似た気持ちを胸に朝礼に臨む。
売り場に整列すると
すぐ周りの人達は私の変化に気付いて「おめでとう」と、言ってくれた。
私は頑張って口角を上げ「ありがとうございます」と、音を出す。
ありがとうございます
と
じごくのかまがあくじかん
なら
後者の方が何倍も魅力的な音だ。
チーフがそんな私達を目にして
「おめでとう。体調が悪くなれば休んでいいからね」
そう言ってくれたので軽く頭を下げた。
連絡事項を聞き
おじきの角度の確認をして
私達は持ち場に着き
音楽が流れ
丘の上に住む人達が百貨店に流れる。
彼らは時に無理難題を言い
売り場を乱すけど
逆らわず私達はその場に溶け込む。
珈琲に渦を巻いて溶け込るミルクのように
自然に馴染んで自分を消す。
彼らから見れば
私達は人間ではなく
売り場の一部なのだから。