たとえこの身が滅びようとも

灰色の空の下を歩き
私は大きな職場に入り制服に着替える。

白いブラウスの内側から
光を帯びる首。

これは隠せない。
あきらめに似た気持ちを胸に朝礼に臨む。

売り場に整列すると
すぐ周りの人達は私の変化に気付いて「おめでとう」と、言ってくれた。
私は頑張って口角を上げ「ありがとうございます」と、音を出す。

ありがとうございます

じごくのかまがあくじかん
なら
後者の方が何倍も魅力的な音だ。

チーフがそんな私達を目にして
「おめでとう。体調が悪くなれば休んでいいからね」
そう言ってくれたので軽く頭を下げた。

連絡事項を聞き
おじきの角度の確認をして
私達は持ち場に着き
音楽が流れ
丘の上に住む人達が百貨店に流れる。

彼らは時に無理難題を言い
売り場を乱すけど
逆らわず私達はその場に溶け込む。

珈琲に渦を巻いて溶け込るミルクのように
自然に馴染んで自分を消す。

彼らから見れば
私達は人間ではなく
売り場の一部なのだから。






< 10 / 37 >

この作品をシェア

pagetop