たとえこの身が滅びようとも
産み場に入ると
そこは大きな会場で
私のような大きなお腹の女性が沢山いた。
慣れてる人達は機敏に動き
スムーズに自分の場所を確認して移動する。
私は送られて来た書類を見ながら
急かされるように受付へ行き
30分以内に産卵を誘発する錠剤を飲まされ
自分の場所を探した。
アルファベットと数字を組み合わせた場所。
そこへ行くと
仕切りも何もない場所に藁(わら)とイスが並べられていた。
フワフワとした、どこか懐かしい香りを誘う藁の上にリクライニングチェアが固定されており、もう両横に人が座っていた。誘発剤を飲まされたので私も慌てて下着を脱ぎ、イスに座ると身体がガクリと沈み腰が藁に沈んで不思議な気分になる。ここで産むと卵が足元に転がり、大きなワゴンを持った政府の人達が回収する。
「あら?あなた宝石売り場の人?」
隣から囀る可愛い声は、前にベビーリングを購入した丘の上に住むお嬢様だった。
「やっぱり同じ時期だったのね。こんな場所で卵を産むなんて不安だったたけど、知ってる人がいて嬉しいわ」
産み場はなぜか、丘の上に住む人達も私達も同じ場所だった。
彼女の足元にはピンクのバスケットが置いてある。
「産まれたらこれに入れて持って帰るの。可愛いでしょう、ママに買ってもらったの」
純粋な言葉は
凶器かもしれない。