たとえこの身が滅びようとも
卵を産んでから半年ほど過ぎた頃
職場に彼女がやってきた。
薔薇色の頬を持つ
柔らかい子を胸に抱き
「ルビーのデザインリングはあるかしら?」
母になった自信の笑みを私に見せ
胸元の小さな子も見せてくれた。
ピンクの帽子をかぶり
白いアンティークレースのドレスを着た子は、とても綺麗な顔をしていた。
私の卵
私とノブ君の卵の子。
ノブ君の子。
ぽっちゃりとした丸い子は私の顔を見て笑う。
ノブ君に似ている。
「綺麗な子でしょう?」
「はい。可愛らしいお嬢様ですね」
震える声でそう言うと
満足そうに彼女はうなずく。
「私にも夫にも似てないの。祖父に似てると皆がいうけど……」
つまらなそうに彼女は言い
目線はもうショーウィンドウに動いていた。
「あと、この子は男の子なの」
「男の子ですか?」
女の子のドレスを着せてるけど男の子。
「だって、女の子が欲しかったんですもの。あそこのピアスも見せてくれる?」
彼女に違和感を抱きながら
小さな子を見つめ
どうか幸せに育ってほしいと心から願った。