たとえこの身が滅びようとも

「手を洗ってくるね」

私は送られてきた錠剤を持ち
トイレに行って、それを白い便器にバラまき
一気にレバーを引く。

ざぁーっと渦を巻いて流れる錠剤。

反社会的思想を抑える薬。

私みたいなタイプは社会に30%ほどいるらしい。
社会に適応できるように『必ず飲みましょう』と、定期的に政府から薬が送られてくる。

他の30%の人達はどこに薬を捨てているのだろう。
きちんと飲んでいるのだろうか。

私はいつものように薬を便器に見送り
洗面所で手を洗う。

鏡の中で青白い顔した女が、疲れた顔でこちらを見ていた。
人よりほんの少し色素が薄い茶色の目と髪。
化粧っ気のない幼い顔立ち。
赤い唇。

首を右に傾げて首筋をチェックする。

まだ大丈夫
何も変わってないけれど
明日には薄く光るかもしれない。

産み場の通知も来るだろう。





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