星の降る夜、僕は君に嘘をつく。
心春は最初、イスに座っていたが、Aメロが終わるときには立って踊っていた。
最後はイスに座って最初と同じ体勢だった。

凄く繊細で柔らかくかつ力を感じる心春らしいダンスだと思った。

一人で充分成り立っているはずのこの曲。
けれど何かが足りなくて、その足りないもの影を少し感じさせる。

かといってそれが曲に悪影響を与えることなく逆に大きな特徴となり、見ている方を幻想的な雰囲気に包むのだ。

今までに見たことのない、完璧な曲だった。

俺は曲が終わった時、思わず拍手していた。

完璧すぎるダンスに俺は何も言えなかった。
茫然自失、とはこのことだと思った。

――やっぱり、俺らの敗けだよ。
なぁ、そうだろう、椿?

ダンス部のトップスターの座は心春のもの。
お前の時代だ。あと3年間。

5年間頑張って積み上げられてきた俺の実力は簡単に抜かれた。

わかってはいたが意外と辛い。
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