星の降る夜、僕は君に嘘をつく。
「家が嫌になって私は宛もなく家を飛び出して走っていった。

あの時、特に意味もなく街中にある公園に入ったら、そこに小学校高学年ぐらいの女の子が一人、ブランコを漕いでいた。

その子は栗色の髪をしていて儚げなその横顔を私は見てられなかった。

『知ってる?
ツバキって花びらじゃなくてその花まるまる落ちるの。

不吉よね、でも私の名前なの。』

特別、意味もなくそう声をかけた。
その子は驚いた表情をした。

『でも、花言葉は控えめな優しさ。
それから…誇り。

凄くいい名前だと思います。』

彼女は震える声でそう発した。

『同じ“春”が入ってるのに何で。
私もそんな素敵な花になりたい。』

『え?』

彼女は不思議なことを話しはじめた。

『“ヒガンバナ”は幸せになれないの。
なってはいけないの。』

彼女はそれだけ残していなくなった。」
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