星の降る夜、僕は君に嘘をつく。
私は絶対に“桐島”を許さない。

桐島君の父親、つまり桐島貴樹は私の兄である碧の父親だ。

櫻さんは20の時に碧兄を一人で産んだ。

その父親は身ごもった櫻さんとお腹の中の碧兄を捨てた。

それから二人が進んだ道は言うまでもなかった。

お金もなく貧しい生活だったそうだ。
当時の櫻さんの平均睡眠時間は一時間半。
寝る間も惜しんで働いても生活はギリギリ。

そんな生活が9年間も続いた。

9年ほど前、櫻さんとお父さんは出会った。

その2年前に私の本当のお母さんが亡くなっていた。

お母さんの遺言の中に“三回忌が来たら私のことを忘れて幸せになって。”そう綴られていた。

そんな二人は次第に仲良くなり今から8年前に二人は結婚した。

今は幸せに過ごせているという櫻さん。

けれど時々、何か思い詰めたような悲しい表情をするんだ。

いくら時間が経ったとはいえ、櫻さんの心のキズは癒えない。
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