きみに届け。はじまりの歌
盛り上がるみんなを宥めるのは大変だった。
部員は納得しているからと何度も話して、ようやく渋々ながらも殴り込みに行くのは諦めてくれたけれど、やはりボランティア部の廃部に関しては、みんなとても残念がっているようだった。
「そうかあ。なくなっちまうのか。寂しいなあ」
「もう何代も前から西高のボラ部の子たちにはいろいろ手伝ってもらってたからねえ」
「送別会でもやろうか。ぱあっと最後を盛り上げようよ」
「いえいえ、お気持ちだけ頂いておきます」
また掻いてしまった汗を拭う。
息をつき、いまだ賑やかなままのみんなの声を聞きながらふと空を見上げた。
夏休みになるころには、きっとこの空はもっと濃く青い。
「でも、確かに何か、やれたらいいね」
わたしの呟きに、隣にいたロクが反応した。
「何かって?」
「わかんないけど、これだけの人に大事にされてきた部を、ただ終わらせちゃうのは寂しいなって思ってさ。せっかくだから、最後に何か、みんなで思い出に残ることができたらいいのに」
少し嬉しく思った。廃部にこれだけ反対してくれる人がいることを知って、改めて自分がいた場所の価値を知った。
大会やコンクールがあるわけでもなく、大きな目標もなく地道に活動するだけの地味な部だ。
それでも何年もこの街の人たちと一緒に活動してきたボランティア部は、その分だけたくさんの人たちに愛されてきた。
「そうだな」
わたしの取り留めのない話に、幼馴染みはそう答えた。