きみに届け。はじまりの歌

喋っていると、すぐにナツメ先輩と東先生もやってきた。
バルーンを片付ける場所もないのでそのままにして、みんなで色とりどりの風船の隙間を縫い定位置に座る。

六個の机を合わせて作った長方形のテーブルの、短い辺に向かい合ってマサムネ先輩とナツメ先輩。
長い辺にテットとスズ、ロクとわたしがそれぞれ座り、テーブルから離れて東先生。
誰かが部活を休んだとしても変わることなく、いつも必ず同じ場所が自分の居場所だ。

スズが全員分のお茶を用意してくれたところで、テットが意気揚々と立ち上がった。

「実は、今日はみんなに提案したいことがあります」

本人以外の部員は全員訝し気に顔をしかめた。部長であるマサムネ先輩も今回は何も聞いていなかったようだ。
東先生だけがすでに何か知っている様子で、微笑ましくテットを見守っている。

「提案したいことってのは?」

マサムネ先輩が訊ねると、テットは笑みを深くした。

「おれらで、今年の七夕まつりの舞台に立とう」

晴れ晴れと告げられた言葉に、少し呆気にとられた。
やけにもったいぶるものだから、一体どんなとんでもないことを言い出すのかと思っていたのに、肩透かしを食らった気分だ。

なんてことはない、言われなくてもわたしたちは七夕まつりには参加する。
毎年ボランティア部で七夕まつりの手伝いをするのが決まりごとで、去年も設営から清掃、案内、片付けまで、暑さと目まぐるしさに倒れそうになりながらもこなしたのを、テットだって決して忘れていないはずだ。
そのうえ今回はそのまつりが部の最後の活動になるのだから、みんな気合を入れて参加するに決まっている。
今さら提案されるようなことではない。

いや、でも待て。今、舞台に立つ、と言った気がする。
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