きみに届け。はじまりの歌
「おれたちが部室にしているこの旧校舎、夏休みに取り壊すことになったんだと」
耐久性に問題がある、と以前から言われていたことは知っていた。
この旧校舎は、歴史の長いうちの学校の創立当初に建てられた古い建物だ。すでに授業では使っていないかつての教室を、ボランティア部を含め一部の部活が部室として使い続けていたのだが、今回、旧校舎を取り壊すのに合わせて、ここを拠点としている弱小文化部のいくつかもなくすことにしたらしい。
「他の先生方にな、ボランティア部は運動部と同じく三年の引退が夏休みだから、タイミング的にもちょうどいいんじゃないかって言われて。瀬戸と五条の引退と、廃部とを一緒にしたらって」
と覇気のない声で東先生が言う。
「まあ、マサムネ先輩とナツメ先輩がいなくなったら、あとは四人だけになるしな。今年は新入生がスズだけだったし、来年入って来るかも微妙なところだ」
ロクがぽつりと呟いた。少しの間しんとし、やがて東先生が顔も見えなくなるくらいうな垂れた頃、ナツメ先輩が口を開いた。
「だったらわたしとマサムネが引退する時が、この部がなくなる時ってことだね」
マサムネ先輩が頷く。
ボランティア部は多くの運動部と同じように三年生の引退時期は夏と決まっていた。夏のとある日。
夏休みいっぱいで廃部と言っても、三年生の引退に合わせるのであれば、ボランティア部の最後の日は八月の初旬になる。今年は確か、八月五日。
その日は、地元の安城市──愛知県の三河地方にあり、良くも悪くも目立つところがなく、至って平凡な地方の市──が、一年で唯一派手に盛り上がる、夢のような三日間の最終日だ。
「西高ボランティア部は、今年の七夕まつりの活動をもって終わりだ」