きみに届け。はじまりの歌
今日は、安城駅近くの商店街の人たちと一緒の活動だ。
テットがこの近辺の花ノ木商店街に住んでいることもあって、西高のボランティア部は定期的な清掃活動に毎回参加させてもらっている。
基本的には当日に予定がなければ参加、という形をとっていて、今回は二年と一年の四人で来ていた。
収集場所の公園では、すっかり顔馴染みとなった人たちに混ざり、スズが待っていた。
「先輩たち、お疲れ様です」
スズに手渡されたペットボトルのお茶を一気飲みする。うっすら汗を掻いた体に、冷たさが心地よく浸透していく。
「まだ五月なのに暑いね。今でこんななら真夏はどうなるんだろ」
「本当ですね。そうだカンナ先輩、帰る前に図書館で涼んでいきましょうよ」
「いいね。わたし、新しい図書館ってまだあんまり行ったことないんだよね」
「スズもですよ。うちからだとここって結構遠いので」
今いる公園から、去年オープンしたばかりの市の新しい図書館はよく見える。
現代的でお洒落な建物には図書館だけでなく様々な施設が入っているらしく、目立つものの少ない安城市内において、現在最も注目されているスポットと言っても過言ではない。
わたしはまだ建物内に入ったことは少ないけれど、去年の七夕まつりにボランティアで参加したときに、この図書館の広場に多くの人が集まっていたのを覚えている。
ここは、安城駅を中心に開催される七夕まつりの、メインとなった会場のひとつだ。おそらく今年も最も盛り上がる会場となるだろう。
「よ、おまえらご苦労さん」
拾ったごみの仕分けを任せたロクとテットも戻って来て、しばらく休んでいると、テットのお父さんがやって来た。
「いつも助かるよ」
「こちらこそ、今日もありがとうございました」
「ほら、腹減ったろ。うちの饅頭持っていきな」
おじいちゃんの代から商店街で和菓子屋を営んでいるテットのお父さんは、ひょろひょろのテットと違いまるでプロレスラーのように筋骨隆々だ。
おまけに性格も血気盛んなこのおじさんが、地元で評判の繊細で上品な和菓子を生み出すことが、わたしはいまだに信じられないでいる。