今の私は一週間前のあなた
私は目を瞑って一言一句間違えずに言葉を放った
「『あんたのせいよ。あんたのせいで、修也が。』『あんたなんかを庇ったせいで修也が…』」
修也のお母さんはびくりと体を震わせて私を睨んだ
「…あなた、喧嘩を売りに来たの。」
私は微笑みを崩さない
どんなときでも
「まさか。私は話をしに来たんです。
…そして、私はこう答えた」
「「『私が死ねば良かったんでしょう?』」」
私の言葉をかぶさった声は修也のお母さんの口から発せられている
動揺をどうにか隠し言葉を選ぶけれどうまく思いつかない
そこで修也のお母さんが呟いた
「…そう、思っていたわ」
と
「あなたが死んで、修也が生きていればいいと。そう思っていたのよ」
ドクンドクンと早く打つ心臓の音がバレないように握り拳を強く握る
「…それで、あなたのその言葉で私は現実に引き戻された。なんてことを言ってしまったんだろう。って」
私が話をしに来たのにいつのまにか聞き役になってしまっている
そして、突如修也のお母さんが私を睨んだ
「けれど、正解だった
あなたを恨むことが正解だと今感じたわ」
ピクリと微笑みに力が入る
それでもどうにか耐えた
「修也の時が止まったというのに、あなたの時は進む
修也がいなくても笑う毎日なんでしょう。
毎朝学校に通って友達とはしゃいで笑って。
その証拠にあなたは今笑っている
その笑顔は生きてる。
…けれど私は
修也がいない事が苦しい
笑うことなんてできない
…あなたとは違って。」
はっきりとした軽蔑の言葉だけど
それは違う
私は死んでる
私はもう藍乃じゃないのだから。
きっと、私たちから距離をとりすぎたから
私が引きこもっていたことを知らないのだろう
知られているとは思っていないし
それで良かったと思っている
ガタンと気を荒くしたお父さんが立ち上がった
言い返すつもり?
やめて。そんなのいらない
私が変える
私が崩してしまった関係を
私が立て直す
それに…
この言葉を待っていた
「お父さん。お母さん。そして、修也のお母さん。
…私の部屋に、来てもらえませんか…?」