今の私は一週間前のあなた
階段を駆け下りて
玄関の扉に手をかけた
「…い、いってきます!!」
私はもう2度と「ただいま」と言うことはないこの家に
私は大きく叫んだ
「藍乃ちゃん!?こんな時間にどこに行くの?!」
愛妃ちゃんの声を振り切って
私は走った
…何処?
今から、私は何処に行けばいい?
何処に行けば乃々に会える…?
はぁはぁと息が切れて苦しいのに
私は走る足を止めない
自然とその足は高校に向かっていた
私の一番思い入れのある場所
修也と付き合えることになった場所
高校
「…乃々…っ」
私はあなたに聞きたいことがあるの
…どうして、私を抱きしめてくれたの?
…どうして、私がひとりだと言ったの?
…どうして、私をたすけてくれたの?
走れば高校は思ったよりも近い。
私は高校の周りを囲う塀を乗り越えて無断で入った
家庭科室の窓は鍵が壊れてかかっていない。
と、そういう噂を一度だけ聞いたことがあった
噂通り
家庭科室の窓の鍵は開いていて。
学校に入っていく。
足音が聞こえないように靴を脱いで靴下で長い廊下と階段を走った
真っ暗な高校は
中学の時肝試しをした時と同じような雰囲気なのに
私の心はやけにスッキリしていて
恐怖よりも
乃々に会いたいという気持ちが優ったからだと思う
向かう先は2年の私の教室
あの教室には
まだ、修也の席がある
私の席もある
だから…。
ガラリと教室の扉を開けると…
「…乃…々」
くるりと微笑みを浮かべた“私”がこちらを向いて私を見つめていた