今の私は一週間前のあなた



「うあぁぁぁあ…っ!」



もう動かない体を抱きしめて
私は泣いた

もうひとりの自分を抱きしめて泣いた





カチャン…

抱きしめたおかげでポケットから何かが落ちた
一瞬でそれに目を奪われる


…懐中時計…?

もうボロボロになった懐中時計を拾い上げると
その針は止まってしまっていた


けれど、…それよりも
…何で私の懐中時計を乃々が持っているの…?


適当に持って来たカバンを漁ると
けれど確かに懐中時計があった


私と同じもの…?
否、そんなもの売っていなかった
この時計はあの店の“オリジナル”だと思うし
2つあったとしても買っているそぶりなんてなかった


私は自分の懐中時計のボタンを押して時間を見ようとした


開くと
壊れたのかグルグルと勢いよく
“左回り”に回っている
カチカチと時間を刻む方向が逆になってしまっている


と、そこで思い出した


「…懐中時計じゃなくて…鏡時計だ…」


まだ涙が目に溜まっているのに
考えることがやめられない

少しずつ冷たくなっていく躰から手を離すことはないのに


…カチッ

時計が逆方向に時間を刻み
私は気づいてしまった
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