今の私は一週間前のあなた
〜〜
小学5年の春
5時間目に
身体測定があった私たちは結果の紙を手に教室内でぎゃあぎゃあと笑い合っていた
身長の勝負や
体重を教えあったり
大抵は意味のないことだし、
私は正直誰かに自分のことを知られるのは恥ずかしい
そう思っていた
「何センチ?」
突如
しゅうやが私の身長と体重の書かれた紙を覗き込む
「えっ、あ…ちょっと見ないでよ!」
紙を背中の後ろに隠すとしゅうやが頬を膨らませる
「女子は気にするらしいけど
俺は別に体重なんて気にしねーよ!
いいから見せろって」
「やーだー」
女子が気にすること知ってるならやめてよ
はずかしいの!
バタバタと走って逃げようとすると
ぱしっと私とそう変わらない手で
それでも少し力強い手で
私の手首を掴んだ
「…んじゃ、こっち来い」
手を引かれて
ついて行くと柱があった
この小学校は校内の真ん中に大きな木の柱がある
こっそりと教えろとか言われると思って警戒してしゅうやを睨めばしゅうやはニヤリと笑った
一階から四階まで同じ場所になぜか建てられた柱
改装をする前の学校は木造建築だったらしいからきっとその残りだろう
こんなところでなにを?
しゅうやは柱に背を預けて
ポケットから出した油性ペンで頭の上に線を引いた
なにしてるの!?
「えっ、勝手に書いていいの!?」
「まーまー…ばれないって」
しゅうやは「ひひひ」と悪い笑みを浮かべて
私の手の上にペンを乗せる
「…う、うーん」
しゅうやの真似をして柱に自分の身長の線を引いた
「…くそっ!負けた…」
引かれた線は少しだけ私の方が高くて
しゅうやは悔しそうに頭を抱える
「…しゅうやは…なんで私に勝ちたいの?」
私が聞くと
しゅうやは驚いた顔をしてから赤くなった
「…べつに、いいだろ。背が高い方が格好いいじゃん」
ふい、と顔を背けていても
耳が少しだけ赤いのが見えた
しゅうやはちらりとこちらを向いて呟く
「…それに、お前も背が高いやつの方が好きだろ…?」
「…え?…うーん。どうだろ」
首をかしげる私は軽く想像する
たしかに、あんまり想像はできないけど
そっちの方がかっこいい…かも?
そんなことを言うのは何だかはずかしい。
それに
一つイタズラを思いついた私はしゅうやにニヤリと笑った
「しゅうやが私の背を抜かすとは思えないからわかんないや!」
「…っ!絶対抜かす!」
しゅうやはムキになって私を睨んだ
その姿がなんだか可愛くて
愛らしくて
口元が緩んだ
「どうかなぁ?」
にやにやと笑う私に
悔しそうな顔をするしゅうや。
「じゃあ、俺がお前の背を抜かしたら、またここに書きに来よう!約束だ!」
思いつきのような言葉だったけど
「仕方ないなぁ、そんな日が来るかわかんないけどね」
私たちは小指を重ねた
ゆーびきーりげーんまん
うーそついたら はーりせーんぼん
のーます
ゆーびきった!
〜〜
気がつくと目の前にあの柱がある
あまり時は経っていないと思っていたのに
昔より少し埃っぽくて
古い感じがした
あれから
7年が経ったのだと、実感した
「ほら、ここ見て?可愛らしいでしょう?」
先生の指差した先には懐かしい二本線が引いてある
その線を軽く越してしまっている私は見下ろすようにそれをみた
「…しゅう、や…」
悲しいとか
苦しいとか
考える前に頬を涙が流れた