今の私は一週間前のあなた




「藍」



私が求めた人物とは別の人
私と同じ声に、私の名が呼ばれた

「の…の…」

掠れる声で彼女の名を呼べば乃々は優しく微笑んで返してくれる


「しゅぅ…やが…!」

縋るように
何かを求めるように
両手で乃々の服の袖を強く掴む




私に残していた




『ひとりじゃない』って…


言葉を。


どうして修也がそれを書いたのかはわからない
けれど、



私は…ひとりじゃないんだ。



涙が溢れると同時に
心の底に言葉がストンと落ちてくるようだった


私には
乃々がいる

隣にいてくれる


…修也。
私はひとりじゃないよ



大事な約束を思い出すきっかけをくれた乃々が隣にいてくれるから








乃々は涙でぐちゃぐちゃになった私に
優しく微笑んで
私の両手をとった




乃々も…隣にいてくれるでしょう?




柔らかく肩の力が抜けて笑みがこぼれた

乃々は変わらず私に笑いかけてくれる









「…ごめんね。あなたはひとりだよ」










その笑顔も、突きつけられた言葉も


冷たくて。





あまりにも冷たくて






息が止まった



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