今の私は一週間前のあなた
「…私がいない教室を想像したの。
誰も、気にもとめていなくて
友達と元気に笑いあって前みたいに騒がしい教室」
ポツリと呟けば進が動揺するように自販機で買った缶コーヒーを傾ける手を止めた
きっと想像通りの現実なんだとわかってはいるし、
私がいないだけのことで誰かに悲しんで欲しくなんてない
笑ってくれた方が随分と気が楽だ
「…本当はその輪の中に修也がいて
笑っているはずなのに。…現実は悲しいね」
ふぅ、とため息をつけば重苦しい雰囲気の私たちの中に進の言葉がやって来た
「…お前も、輪の中にいなきゃいけないだろ?」
「え?」
首を傾げて進を見れば
まっすぐな瞳に見つめ返される
「お前も、愛妃と俺の友達で、同じクラスのメンバーだぞ?
お前も、教室の真ん中で笑っているひとりなんだよ」
はっきりとした私の考えを拒絶する言葉は
あまりにも優しかった
「私がいても、いなくても変わらないよ」
「そんなことない。
少なくとも愛妃も俺もお前がいないのは嫌だ」
進は本当にまっすぐで。
たまにイタズラを仕掛けて笑ってくるけど
基本は優しくて
間違ってることならば相手が誰であろうとはっきり言うタイプで
クラスの人気者。
進のまっすぐな目と言葉はきっと嘘じゃない
…嘘じゃあ…ない
「…どーかなぁ?」
嬉しさと
馬鹿な自分への呆れ
そして、私はもう2度とその輪の中には入る事はないという現実が辛くて
目に溜まった涙がこぼれないように上を向いた
「…そう、なのかなぁ…?」
震える唇で溢れる涙に耐えながら無理矢理笑って呟くと
進がまた、まっすぐな言葉を私に向けた
「そうだよ。
お前も、
修也も。
俺たちには必要なんだよ」
私は友達を信じてなかった、のかな
殴られた時
目をそらされたくらいの小さな事で。
よく考えたら助けになんて行けないでしょ
私も悪いんだから
私が殺したって言われたっておかしくない状況だったんだから
愛妃ちゃんも、進も
もしかしたら迷ったのかもしれない
本当は私を、助けようとしてくれたかもしれない
また、笑えたのかもしれない
私が壁を作っていたんじゃん。
私が愛妃ちゃんと進のことを理解しようとしなかったんじゃん。
…馬鹿だ。私
何よりも
何にも変えられない
大切な人は
修也だけじゃなかった
今更、気がついた
…ねぇ、乃々。
私、ひとりじゃなかったよ
修也がいなくても
乃々がいなくても
私には、友達がいた
私には…大切な、大切な
側にいてくれる
友達が居た