今の私は一週間前のあなた
〜〜
ぱちりと目を開けば
私は誰かにもたれかかっていたみたいだった
ふわりと服から香る柑橘系の香りが進の匂いで、知らない人じゃなくてよかったと安心する
「…藍乃には、悪いことをしたなぁ」
独り言のようにつぶやかれた言葉を私は聞き逃さなかった
「どういう事?」
体を起こして問えば
進が苦笑いして「おきてたのかよー」と言う
私が話をそらさないで。と、真剣に言えば進は私の瞳を見つめた
「…藍乃が修也の親に殴られた瞬間。俺は怖くなったんだ
ちょっとだけ俺も修也の親と同じことを考えてしまっていたから。」
「…藍乃ちゃんのせいで修也が死んだ…って?」
そうだ、とでも言うように進が頷くと
私はハッとして周りを見渡した
さっきまで藍乃ちゃんと会話していたから
聞いていないかと怖くなったのだ
嫌われないか…と
でも、よく考えたら
藍乃ちゃんが私を嫌うはずがないと自信を持って言えるようになっている
きっと、私の思いを全部伝えたから
藍乃ちゃんの涙を見たから。
「…藍乃は帰ったよ。ちょっと前に」
私の行動に何かを感じ取ったらしい進が言うと私は「そう…」と視線と話を進に戻した
「俺は自分を呪ったね
だって、ちょっと考えたら自分なんかより藍乃の方が辛いってわかるじゃん」
「…うん」
「…それでも、割り切れなかったんだよな…」
進は雲の隙間から太陽の覗く空を見上げながら呟いた
「…修也…なんでいなくなっちまったんだよ」
進の口からポツリとつぶやかれた言葉は
きっと進が藍乃ちゃんには言えなかった言葉。
私だけが知っている言葉
そして、私も進と同じ思いを抱き抱えている。
修也に、死んでほしくなかった
「…藍乃ちゃん。学校に来てくれるかな」
「来るよ。絶対」
私たちは手を繋いで
いつかみたいな教室で笑い合える日に思いを馳せた