今の私は一週間前のあなた
〜
「…ゃ…しゅ……」
誰かの泣き声が聞こえる
「…う…ゅ………し…ゃ」
頭が重い
瞼が持ち上がらない
それでもただ聞こえる声
…誰の声?
……どうして、泣いているの?
「…修也ぁ…っ!」
突如声が大きくなって頭に ぐわん と響く
激痛が走り頭を抱えれば走馬灯の様な灰色の記憶が駆け抜けた
〜
「…修也ぁ…」
ガンガンと棺桶を叩き涙を流す女の人の姿と
それを制止しようと止める男性の姿を
私はなにも言うこと無くただ見つめていた
女の人は壊れるかの様に泣き叫んでいるというのに
私の瞳に涙らしきものはない。
何故だか泣き叫びたい気持ちが込み上げるのに
声も涙も溢れることはなかった。
泣き叫ぶ女の人は踵を返し私をキッと強く睨んだ
胸ぐらを掴まれて身動きが取れない
「…あんたのせいよ…っ」
…違う
違う。
私は…っ
どんなに叫んでも叫んでも
女の人に届くことはない
私の唇が開くことはない
…これは…夢?
唐突にそう思った。
現実か夢かわからない今
私の指の一本も動かない事実が
私の心の奥に隠された記憶である、と
それでしかないと思った
女の人の右手が唸りを上げて振りかぶり
勢いよう私の頬にクリーンヒットした
しかし、痛みはあまり感じない
夢…?
…ならば
伝わることのない夢ならば声を上げる事をやめようか?
どうせ届くことがないならば
「あんたのせいで修也が!」
『…違うっ!』
やめたらいいのに心が叫んでしまう
私のせいじゃない…って。
誰も信じてくれないのはわかっていても
叫びたい衝動を抑え切ることができない
耐えきれなくなって私は女の人に向かって叫んだ
私だって…
私だって…っ
「修也に生きていて欲しかったよ…っ…!」
ガバッと体を起こせば真っ暗で。
しばらくそのまま動かずにいると目が慣れてきて自分の部屋であると理解した
…今のは夢
こっちが現実
今の状況をどうにか把握し
自分の状態を確認した
背中が汗ばんで湿っている
額の汗を拭おうと腕を持ち上げれば
手の甲にポタリと雫が落ちた
「…あれ…?」
人差し指で軽く自分の頬に伝う雫を拭った
「…私…泣い、てる?」
掌を上に向けて顔を下げるとポタポタと雫が掌に流れ落ちた
何故かわからない
何故か。
カシャン
突如音のした方に顔を向けるとカーテンの隙間から覗いた月明かりに照らされて何かが反射した
重い足をベットから落とし、机から落ちたのであろうそれに触れた
「…ネックレス」
それはあの日修也にもらったものだった
家に帰ってから乱雑に置いたカバンから滑り落ちたのだろう
それは照らされてキラキラと光り輝いていた。
「…あと、2日」
乃々に示された私の死ぬ時間まであと2日。
私に残された時間はあと2日。
私には、まだ
するべきことがある。
するべきことが
残っていると