アジトでティータイム
社会人はつらい
〇みんなこんなものなの?
社会人になって2年目。
看護大学を出てそのまま看護師になった。
看護師は夜勤やその他の手当てがあり、給料はそこそこいいほうかもしれない。働きはじめの頃は欲しいものはだいたいは買えることに感動したものだ。
しかし、女社会で生きる事や報われない奉仕の生活、命を預かる責任などに不満が溜まらないはずもなく、ストレスのはけ口としての買い物が続くようになった。
「ミエ!またこんなもの買ったの?!貯金くらいしなさいよ」
実家暮らしだと母親が干渉してきたがるのは私の家だけだろうか。
「ちゃんと家にはお金入れてるじゃない。お兄ちゃんよりはお金使ってないし」
兄は市外で一人暮らしをしており、あちらの生活費と比較すれば私の出費なんてかわいいものだ。
「あと、今度2連休できたし友達と温泉行ってくる」
「遊んでばかりじゃないの!」
どうやら我が家は毎日労働しないといけないらしい。白石家もブラック企業コンテストに応募しないといけなくなりそうだ。
聞いていないふりをして居間を出て自室のある2階へ行く。階段の踊り場には母の趣味の造花が多く並べられており、この家は母親の城ともいえる。インテリア、配置、ほとんどが母親の好みで仕上げられている。
唯一自身の自由を保障されている自室の扉を開けるとほっとする。
着道楽な私には服、靴、鞄こそが宝。余計なインテリアにお金をかけるものなら一枚でも服に費やしたい。今日買ってきた5㎝くらいの控えめなヒールの黒のパンプスは普段使いにぴったりだ。
「ちょっと太ったかな・・・。」
最近は夜勤中にお腹がすきやすく、休憩中にはお菓子を食べ過ぎてしまうことが多かった。
ダイエットしよう。服は痩せるまで買わないでおこう。ご飯は自分で野菜中心にしよう。
あれこれ考えているうちに母親が2階にあがってきた。
「ちょっと庭のプランター植え替えて頂戴」
「父さんいるじゃん」
「お父さんは洗車してるの」
全員が労働の義務。父親も例外でないようだ。
最近中腰姿勢もつらいなと職業病のことを考えながら植え替えをしていると、兄がたまたま家にやってきた。
「いらない皿何枚かもらいにきたわー」