リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。





静寂の中、急に男の人の声が聞こえて、驚いて周りを見回す。



人の気配は相変わらずない。でも、確かに聞こえた。間違いない。どんなに雑音の中にいても、自分の名前だけははっきりと聞き取れるものだ。



「誰?」



声を絞り出して問う。もう一度さっきの声が「ここさ。」と言って、神社の大木の裏から人影がすっと現れた。



まるで、今まさにテレポーテーションしてきたみたいに、音もなく現れた。



「メールは読ませてもらったよ。どうやらクライアントってわけじゃなさそうだけど。」



人影が月明かりで露わになる。その声の主の容姿を見て、私は驚いた。



若い。それも私と同じくらいの高校生に見える。少なくとも大人ではない。




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