リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。





「殺しの経験は?」



彼が傍にあったボロボロに錆びついたベンチの上に乗って聞いた。



「ない。」



「だろうね。キミからは血の匂いがしない。」



彼の言う「血の匂い」が何を指しているのかはわからなかった。まさか、人殺しをしたことがある人が、本当に血の匂いがするわけじゃあるまい。



何か人殺し同士にしかわからない雰囲気というか、顔つきというか、そういうものがあるのだろう。



「どうして殺しをしたいんだ?」



彼は決まりきったことを訊いた。だって、そんなの一つしかないじゃないか。



「……興味があるから。」



「殺しに?」



黙って頷いた。彼の目が静かに閉じた。



「サイトのことはどうやって知ったんだ?」



また、彼は決まりきったことを言った。まどろっこしい。



「あなたが捨てたパソコンを拾ったから。」



ため息をつきながらそう答えた。しかし、彼は「パソコンを捨てた?」と初めての反応を見せた。



「僕がパソコンを? どうして? 捨てないよ。」




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