リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。





強がりだと思った。



彼は私の的確な指摘に図星を突かれて、毅然とした態度を無理矢理作っているんだ。



「少なくとも、あなたよりはましだと思う。」



「じゃあ、訊くけど。」彼がベンチから降りた。



「稲荷神社って、日本全国にどれくらいあると思う?」



……そうか。そういうことか。と気づいたときには、もう遅かった。彼の口が開くのが2秒ほど早かった。



「約30000社。稲荷神社のない都道府県なんてない。送信元を調べれば、どこから送られてきたメールなのかはすぐにわかる。そこから一番近い地域に住む僕たち裏の人間が派遣される。場所はもちろん、稲荷神社に。」



だからだ。だから、住所を打ち込む欄も、氏名を打ち込む欄も、メールアドレスを打ち込む欄も必要ないんだ。送られてきたメールにわざわざ返信する必要もない。



ということは、このサイトは間違いなく日本全国どこからでも、どのブラウザからでも閲覧できて、誰でも依頼を申し込めるってことだ。



きっとパソコンにカメラも、マイクもなかったのだろう。だって、必要がないのだから。集合時間と場所さえ勝手に指定しておけば、会えるのだから。




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