リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。
部屋を出て、下に降りると、紗栄子がビールケースを椅子代わりに座って、電子タバコを吸っていた。
「起きたか……。」
私の方をチラッと見た紗栄子の目からは何も感じられない、死んだような……いや、死ぬことを覚悟しているような、死んだこともとっくに忘れてしまった幽霊のような、そんな目をしていた。
「朝ごはん、食べた?」
私の問いに、紗栄子は足元にあったお酒のボトルを掲げた。
その右手には、血が付いていた。
「怪我したの?」
「いいや。」紗栄子はお酒を飲んだ。
「さっき仕事を終わらせたところだ。」